(記事後半部分を抜粋)
■飼い主も高齢化、世話できず
猫専用の施設もある。活動開始から今年で5年目を迎える磐田市大原のNPO法人「ねこホーム」。現在預かっている猫は41匹。終生飼養の預かりは33匹で、約9割は10歳以上の老猫。約1割は高齢による持病の治療を受けている。
運営するのは代表理事の西城磨優美さん(43)と副理事の牧野建男さん(67)。
2人は元会社の上司と部下。西城さんが譲り受けた猫2匹を牧野さんが世話をするうち、「僕が死んだら猫たちが困る」と思ったことをきっかけに12年に活動を始めた。
41匹はログハウス風の施設で暮らす。中は6部屋あり、猫たちは相性を見極めた上で部屋分けされ、1日1回、室内を散歩する。面会が難しい飼い主には猫の近況を知らせる手紙や動画を送る。最期の前兆を感じたら、飼い主に連絡し、最期を愛猫とともに過ごせる環境を準備するという。
終生飼養で預かった猫のほとんどは、高齢の飼い主が亡くなったり、入院したりする理由から、「実家の猫をどうしたら良いかわからない」という家族が預けに来るという。14年には、高齢者施設に入所した神奈川県の女性の飼い猫を娘たちから預かった。猫は糖尿病だったが、昨年秋、19歳で息を引き取った。その後、娘たちから「預けた時に獣医から余命数カ月と言われたのに、こんなに長生きするとは。ありがとう」と言われたという。
施設で亡くなった猫たちは、施設の裏の薔薇の木の下に眠る。薔薇の園芸が好きな牧野さんが猫のためにと墓を作り、飼い主たちも祈りに来るという。
飼い主やその家族は愛する猫を預ける際、「飼えなくなる日が来るなんて。こんなはずじゃなかった」と口をそろえる。ねこホームは有料だが、預けようにも資金がなく、困る人も多いという。
4年間で受けた問い合わせは1万件以上。ニーズの高まりを感じ、今夏、敷地内に100匹を受け入れ可能な施設をつくる予定。西城さんと牧野さんは「猫の幸せが、飼い主の幸せになる。安心、信頼のできる施設が増えれば」と話す。(北川サイラ)